人物デザインは総合的な視点によって人物像を作る方法です。
映画や舞台ではキャラクターのビジュアルを生み出すにあたって、衣装部、ヘアメイク部、特殊メイク部、特殊造形部、小道具部などの専門職がそれぞれの分野を担当してひとつの容姿を生み出します。
この取りまとめ役が人物デザイナーです。
複数の分担が集まってひとつのキャラクターを作る場合には、コンセプトの共有、各部同士の緻密なコミュニケーション、共通した美意識や適切な予算配分などが必要です。これらが的確に行われることによって素晴らしい人物像が生まれます。
起こりやすい課題として、キャラクターの容姿について各部のコミュニケーションが滞ったり、美意識や美的文脈の違う専門職が選ばれたり、予算配分のいびつさや情報の齟齬によって必要以上に制作費用や期間が費やされたり、突発的な演出の要求に対して一貫した概念と技術で各部が即応できないこともありました。そこで必要になったのが人物デザインです。
人物像のコンセプトとデザインを作り最後まで一貫性をもって各部を統括する=人物デザイン
プロデューサーや監督、演出家はキャラクターのビジュアルについて人物デザイナーにご指示いただくことによって、ビジュアルコンセプトやデザイン、適切なチームの提案を受けて、必要な期間のクォリティーが監理されます。
長期間の撮影や公演期間の中で扮装について演出から新たなアイデアが出た場合、一元的に人物デザイナーに指示していただければ、各部複数に情報を発信することによるニュアンスの変化や情報のこぼしを起こさずクリエイティブが担保されます。
役者から指名のヘアメイクや衣裳デザイナーがある場合に、その部分だけが作品のテイストの中で突出することなく、バランスを保ちながら質を向上させ、なおかつ役者の精神安定の一助になるように扮装チームの組み合わせを差配するのも人物デザイナーが受け持ちます。
人物デザインは一つの作家性に偏った表現をするのではなく、「作品の質に合った人物像は何か」を探し出します。
作品が100あれば100違う人物像を求められます。
企業も100あれば100違う顔を求められます。
個人も100いれば100違う美しさが必要です。
人物デザインはそれぞれに必要な人物像についてディスカッションし、それに見合うコンセプトとチームを編成し、「うつくしいひとを生み出す」のが仕事です。